2022.06.09 県民会館大ホールにて
この講演会は、各界のリーダーとして活躍しておられる卒業生を招聘して開催されています。現役生にとって、先輩の歩みを自分と重ね、日々の過ごし方・学び方を見直し、将来を展望するきっかけとすることを目的に、年1回、開催されています。
今年度は、講師として、大阪大学 消化器外科 教授 土岐祐一郎 先生 をお招きし、演題を「外科医という仕事を選んで」として、75分のお話とそれに続く15分の質疑応答が行われました。
土岐先生は、1960年のお生まれ。母衣小学校、松江第二中学校、松江北高理数科(高30期 理数9期)をご卒業。大阪大学医学部に進まれ、その後米国コロンビア大学に留学、帰国後は大阪府立成人病センター等を経て大阪大学大学院医学系研究科病態外科講座助教授、同外科学講座消化器外科教授、2020年4月から2022年3月まで、大阪大学医学部附属病院長として、コロナ禍の大阪府の医療現場の最前線を陣頭指揮されました。ご専門は、食道がんなどの上部消化器がん治療です。土岐先生のお名前から、長らく北高で数学教師をおつとめになられた土岐俊一先生を思い出された方も多かろうと思います。祐一郎先生は俊一先生のご長男です。
お話は、高校時代の仮装行列「長靴を履いた因幡の白うさぎと亀」の思い出に始まり、幼少期を過ごされた西川津界隈のこと、ご家族、とりわけお父さまとの思い出、高校時代の愉快なエピソードと続きました。
また、大学進学後、自分の進むべき道が見えないなかで訪れた果敢に種痘に立ち向かう先輩医師との出会い、「先生が主治医でよかった」と患者さんのご家族から感謝されたこと、実力のない若い医者は患者と向き合う時間をたくさん持つことだと悟り、必死で学んだこと。転移しやすく合併症の危険の高い食道癌を専門とすることを目標に定め、自分が満足するまで「動かずに後悔するより動いて後悔せよ」との決意のもと、医師としての歩んできたことを語られました。
また、後輩たちに、いくつか参考として欲しいことを示されました。①多様な人間と濃密な関係を経験してほしい。②夢はなくても、日々を一生懸命に生きることが大切。③人に感謝される喜びを知るために人の嫌がることをやってほしい。④すこしだけ背伸びをし、自分の周りのことや外のことを考えよ。⑤尊敬できる人との出会いが大切。最後に、座右の銘として「立って半畳、寝て一畳、天下取っても二合半」を掲げられました。
目的もなく、流されるまま過ごしてきた自分が、やがてやるべきことを見出し、目の前のことに必死に取り組くんでできた自分の歩みを「ピノキオ」に例えられ、まっすぐな言葉で語られたお姿に、心を動かされたひと時でした。
生徒からは「術後に患者さんが亡くなられたりしたときにメンタルをどう保ってこられたのか」「阪大に入るための勉強は大変だったか?」「これから何がやりたいかわからないときはどしたらよいか」「がむしゃらでない、しあわせな働き方とは何か」「必要に迫られたときの勉強の仕方は」といった質問が次々に投げかけられました。土岐先輩の姿を「等身大の先輩、すてきなロールモデル」として受け止めている生徒たちでした。
ご多忙な中、後輩たちのための時間を作っていただいた土岐先生に、感謝申し上げます。まだまだコロナ禍にあって厳しい状況が続く医療現場です。どうか、御身おいといのうえ、ご活躍ください。ありがとうございました。
文責 高26期 理数5期 泉雄二郎
夕刻より開催された市民向け講演会「COVID-19は日本の医療の弱点を突いてきた」に参加された土岐先生の同期(高30期)の方々。(左から 森脇美成さん、角克彦さん、千葉潮さん、小笹浩さん、土岐祐一郎先生、舟越幹洋さん、江角直記さん)
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